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佐藤潤一(農学研究科 森林科学専攻 修士2年)
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目覚まし時計のアラームが鳴った。時計の針は午前7時を指している。眠たい瞼を擦りながらアラームを止め,もぞもぞと起き上がって部屋のカーテンを開ける。朝の光に映える中庭の緑が今日も眩しい。窓を開けると,8月とは思えないほどの冷気が部屋に流れ込んできた。こんなにも清々しい夏の朝を迎えるのは何年振りだろうか。
7時30分,身支度を整えてホールに向かう。彫刻で飾られた重厚な木製の扉を開けると,既に数人の友人が朝食をとっていた。「おはよう。」「あ,おはよう!」3週間前までは見ず知らずの他人だった私たちだが,今ではすっかり気心の知れた友人と呼べるまでになった。
午前9時から始まる英語の授業は主に,リスニング,スピーキング,およびライティングにおける英語運用能力の向上を目的としている。特に印象的なのは,イントネーションやカテネーションに関する講義である。スピーキングにおいてこれらが重要であることは当然の知識として持ち合わせていたものの,より自然で,わかりやすく,説得力のある話をするためにこれほど重視されるものだとは思っていなかった。また,講師が各学生の長所と短所を的確に見極めた上で,自律的な英語学習ができるよう様々な工夫がなされている。例えば私の場合,エッセイライティングにおける語彙選択の問題点を指摘され,語句の使い分けを中心に指導を受けた。クラス全員が同じ内容を受動的に学ぶという,これまでに私が日本で経験してきた英語教授法とは全く異なる方法であり,効率よく意欲的に学習を進めることができた。
12時30分。ランチの時間である。午前の講義内容を復習する人,昨日課された宿題を確認する人,講師陣との雑談に興じる人,黙々と食事を済ませて昼寝に向かう人。昼休みの過ごし方は文字通り人それぞれである。
13時40分に始まる午後の授業では,環境問題に関する講義を選択した。学際的なテーマだけあって,様々な視点からの意見が飛び交う。自然科学を中心に学んできた私にとって,政治学,経済学,法学,あるいは教育学の観点を持った学生の議論は非常に刺激的で興味深いものである。1つの分野に閉じこもって学問を修めるだけでは得られない幅広い知識・教養の必要性を改めて痛感することができた。午後の講義は16時15分に終わった。数名の男子が集まってカレッジ内のピッチでサッカーを始める。スポーツを通して参加者同士の交流を深められるうえ,日頃の運動不足も解消できる。なんと健康的な生活を送っているのだろう。
18時30分からは夕食の時間である。スマートカジュアルな服装に身を包み,荘厳なホールで食事をとる光景は,いかにも英国らしい。オックスフォードの空は21時になってもまだ明るい。カレッジ内のパブを訪れ,同じくカレッジに滞在しているトロント大学の学生たちと交流する。お酒はもちろんクイズ,カラオケ,ダーツ,ビリヤードなどを通して多くの人を知りあうことができた。
22時50分。今日の授業の復習と,課された宿題に取り組む。今回の宿題は「安楽死」に関するエッセイを書くことだ。インターネットによる調査と講義中に行ったディスカッションを基に構成を考える。難しいテーマだが,その分やりがいと自分の成長を実感できる課題である。
24時40分,英語で飽和した頭のままベッドに潜り込む。今日も充実した1日を送ることができた。明日は一体どんな1日になるのだろうか。部屋の隅に置かれた冷蔵庫のファンが止まり,一瞬の静寂が訪れる。私はそっと目を閉じ,眠りについた。
(※この報告はプログラム実施期間中に中間報告として作成されたものです。)